規格調査会委員長挨拶

情報規格調査会 委員長 伊藤 智

2013年6月の情報処理学会定期総会において、大蒔委員長の後を受け、情報処理学会標準化担当理事、および情報規格調査会委員長に就任しました。情報規格調査会は、ISO/IEC JTC 1の日本のミラー委員会として情報技術に関わる国際標準化を担う組織であり、委員長としての重責を強く感じています。責任をもって会の運営にあたるとともに、国際標準化活動における日本の貢献を積極的に推進したいと考えています。

JTC 1 が1987年に活動を開始してから約25年が過ぎました。この四半世紀の情報技術の発展は大変めざましく、今では、あらゆる場面でITが使われていると言っても過言ではなくなりました。インターネットが世界中に張り巡らされ、企業の情報システムだけでなく、パソコンや携帯電話、自動車、家庭用電化製品まで、あらゆるものがネットワークにつながるようになってきました。人々は、それらの機器を通して、多くの情報を発信するとともに、多くの情報を取得するようになりました。また、情報技術は、生産・流通など産業の効率化、環境負荷の低減、医療・介護の支援など、様々な面で社会に対して大きな貢献を果たしてきています。

このような社会の実現において、標準化の存在は欠かせません。もし、規格がなければ、正しく情報が伝えられなかったり、知らせるつもりのない人に情報が伝わってしまったり、均質に情報の恩恵を受ける機会を逸したりするなど、とても不安定な社会になることが予想されます。JTC 1の活動が始まった頃に比べると、ITの使われる場が増え、標準化すべきテーマも増加し続けています。JTC 1そして、情報規格調査会の果たすべき役割は益々高まっていると言えるでしょう。

委員長就任にあたり、抱負として、三つのことを推進したいと考えています。

一つ目は、新領域および日本にとっての重要領域への活動重点化です。
ここ数年、JTC 1では、毎年のように新しい組織が誕生しています。2009年にはWeb ServiceやCloud Computingを扱うSC38(Distributed application platforms and services (DAPS))が、2011年にはグリーンITやデータセンタのエネルギー効率などを扱うSC39(Sustainability for and by Information Technology)が、2012年にはInternet of Thingsに関するSpecial Working Group、が設立されました。規格策定がスコープではない組織もありますが、ターゲットとしているテーマは、いずれも日本において重要な(もしくは、今後重要となる)ビジネス領域または技術領域ととらえています。また、既設の領域については、活動の必要性や標準化によってもたらされる効果を鑑みて、重点的に取り組むべきか否かを判別し、重要領域を見定めていきます。重要領域への取り組み方としては、日本発の規格を持ち込むケース、日本にとって有利になる(または不利にならない)ような規格内容に誘導するケース、策定後直ちに製品等への反映ができるようウォッチするケースなど、テーマと日本の状況に応じた対応を行いたいと考えます。

二つ目は、情報規格調査会の運営の安定化です。賛助員費の収入は減少傾向にあり、運営は順調とは言えません。委員の皆様に節約のご協力を得ながら、収入と支出のバランスを図ろうと、いくつかの施策を打って、規程および実施細則の変更を行い、運営の安定化を進めて来ました。これまでの施策により、序々にではありますが、安定化に向けて進んでいると考えます。今後も引き続き、安定化を図る施策を進めるとともに、新たな賛助員の獲得や、増口にも取り組みます。一つ目として述べた標準化活動の重要領域への活動重点化も、運営の安定化を図る一つの施策と考え、推進するつもりです。

三つ目は、若手の育成です。
現状、国際標準化の活動者の高齢化が進んでいます。国際標準化は、規格ができるまでに大変時間のかかる活動であり、企業の利益に結びつくのも一般的に時間がかかります。しかしながら、企業においても、大学等においても若手の人材があまり投入されていないのが実情です。社会全体が高齢化していることもあり、熟年層による活動も必要であるという考え方はあるものの、今後も長期的に続く標準化活動を維持するためには、若手の増強は不可欠であり、そのための施策を展開したいと考えています。特に、新しい領域での標準化では、これまで標準化に関わって来なかった人が参画しやすくなるような、育成のための施策を検討します。

これまで情報技術の規格開発に関与されてきた委員やエキスパートの皆さんには、日頃の活動に感謝するとともに、引き続き活動を継続されることを期待しています。標準化の作業は、人と人のコミュニケーションなくしては成し得ません。それぞれの領域で活動されるみなさんが標準化を支える重要な存在です。限られた資源の中で、皆さんの標準化活動を支援するために尽力したいと思います。
また、標準化活動は賛助員による金銭的および人的サポートが不可欠です。これまでの賛助員としてのサポートにお礼申し上げるとともに、今後の継続的なサポートをお願い致します。賛助員の意向を標準化活動に反映していくとともに、標準化の成果・情報を発信していきたいと思います。
委員の皆さん、賛助員の皆さんと意見交換を行いつつ、日本としての国際標準化に貢献していく所存です。

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